2013.10.06

「大人の樹木学」を読んで

木の魅力を伝えるのが仕事だと考えています。生活をともにするパートナーともいえますので、もっともっと多くの方が木を身近なものとして感じて頂ければと思います。ただ、木について知ろうとすればするほどその奥深さに気づきます。仕事柄製材された木は多くみてきていますが、その木の成長を支えてきた葉や木を支える根っこの部分については、街路樹や森林にはえる木ぐらいしか目にしませんし、知識もあまりありません。そのあたりのことは本を読んで勉強することをたまにしています。そんな折り、木に関する新しい本がでましたので、今日はその本を紹介したいと思います。

洋泉社から出版された石井誠治著「大人の樹木学」です。

大人の樹木学

著者は樹木医や森林インストラクターとして活躍されている方で樹木のスペシャリストです。木に関する知識について著者は、

今を生きる皆さんは樹木に関心がなくても生活に困ることはありませんが、木を生活の中で活用しながら生きていた一昔前の人たちにとって、木の情報を知らずに生きていくことは困難でした。有史以来木に頼って生きてきた人類の歴史を意識する時、樹木の発する情報がわかると面白いものです。

と書き、この本を書くきっかけになったようです。ですので、内容もわかりやすく誰がよんでもへぇそうなのかと納得できる木に関する雑学が満載です。

目次の中からいくつかテーマを抜き出してみます。

・なぜ常葉と落葉する木があるのか

・富士山の木に学ぶ

・高尾山のブナ

・朝と夕では違う木の姿

個人的には高尾山のブナの話が、以前高尾山に登った際に少し疑問に感じたことの回答だったので、すっきりしました。高尾山の頂上付近には大きなブナの樹が数多くあります。ですが、ブナの木は白神山地に代表されるように標高が高く寒い地域に生息するとされています。では、なぜ関東の標高が600メートルに満たない高尾山にブナが生息しているのでしょうか?

著者は、今から200年以上前の気象現象に原因があると述べています。この先は、ぜひこの本を手にとってみて確認してください。

本の後半では、日本人の心のふるさとともいえる桜の木にもスポットを当てています。桜といえば、「ソメイヨシノ」が最も有名で多くの人が知っている木だと思います。しかし、家具の業界で多く使われる「さくら」といえばミズメサクラやカバザクラが多いですし、北米産のブラックチェリー材も最近では非常に人気の木です。ソメイヨシノの木が家具に使われることはほとんどありません。そもそもソメイヨシノは、園芸種であり人が植えている木がほとんどです。本著では、ソメイヨシノが1本の原木から枝や芽をとり、苗木に仕立て上げてその苗木を植えてきたクローン木であると説明しています。同じ「さくら」でも種類も様々、成長の仕方まで違う多様性を知ることができます。

ちょっとしたことでも新しいことを知るだけで親近感がわいてくることが多々あります。しかもその事象の裏に知られざるストーリーがあるとその感じはさらに増えることでしょう。せっかく身の周りに多くの樹木があるので、少しづつ樹木のストーリーを学んでみることからはじめてみませんか?
木について無関心が広がり、身近にある木について誰も知らない社会がくることがないようちょっとした雑学から木が好きな人が増えると良いなと考えます。

賢木@吉祥寺

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