2015.03.04

「ドングリの戦略 森の生き物たちをあやつる樹木」を読んで

「ドングリの戦略 森の生き物たちをあやつる樹木」(森廣信子著)という本を読みました。幼い頃に「ドングリ」の実を拾った経験は、誰でもあるでしょう。ですが、その実態はなかなか知ることはないです。中には「どんぐり」という樹種の実が「どんぐり」だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。奥多摩のツキノワグマの食べるエサの量を調べることにあった著者が調査を通して明らかになった「ドングリ」のふるまいをまとめたものだ。調査をはじめた当初は数年である程度の結果がわかるであろうと想定していた著者は結局17年も森に通い続けることになる。そして、これからも通い続けることになるであろうと書いている。たかが「ドングリ」、されど「ドングリ」。実に複雑で奥深い生き物の世界に、何も知らない私たちを案内してくれる一冊だ。

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「ドングリ」といえば、「コナラ」、「ミズナラ」、「クヌギ」などの樹種はぱっと思いつく。だが、「ドングリ」の定義などは何ひとつわかっていなかった。「ドングリ」は幹事で書くと「団栗」となる。意味合いとしては、クリのようであるけど、クリではないということらしい。だけれでも著者は、クリとドングリには沢山の共通点があり、分けるより一緒にしたほうが整理が簡単になることから、クリもドングリの一種として扱っている。

1.大きい

2.栄養を溜めている大きな子葉がある

3.それを薄い皮が被い、さらにもう一枚、硬くて厚い皮が被っている

4.一枚の果皮の中に、樹皮に包まれた種子は一個だけ

5.果皮の外側にお皿のようなものがあって、少なくても若いときには果実全体を被っている

これらの特徴はブナ科に属する樹種に共通する点で、まとめると「ドングリ」はブナ科の樹木が作る果実」ということになる。

まずは、栗の実が「ドングリ」であることには驚いた。木の実であることは同じであっても種類は違うものであろうとなんとなく思っていた節がある。本著ではこのように「ドングリ」の定義をした後で、実験でわかったことが述べられている。詳細については、ぜひ本著を読んで頂きたいと思うがああ、なるほどなと思った木の不思議な性質について紹介してみる。

動物が好んで食べるようなものを、植物が作るのには、植物なりの下心がある。植物の下心は、種子を運んでもらうこと。動くことの出来r内植物は、種子をたくさん作って広い世界に運ばせるために、いろいろな工夫をしている。その1つが、動き回る動物に食べさせて、糞と一緒に新しい世界に種子を蒔いてもらうことだった。

木がなぜ実を生成し、地面に落とすのか?当然のことながら、子孫を繁栄させるための行動である。スギやヒノキはその方法として、花粉を飛ばす方法を選択し、ブナ科の木は、「ドングリ」を落とす方法を経験の中から選択しているということである。

興味深い実験結果が本著にあった。ドングリは動物に運んでもらうために他の種とは違う実を作っているが、どんな動物がどんな実を好んでいるかを調べている実験だ。実験は東京八王子のとある雑木林で餌台にそのあたりにある実を並べ、どの動物がどの実をもっていくかを調べている。その結果、ヤマガラやシュジュウカラといった小さい小鳥は、カヤの実とスジダイのドングリ、ニホンリスはオニグルミ、カヤ、クリを沢山持っていったそうだ。リスは苦みがあって大きいトチや渋いドングリは敬遠して持っていかないそうだ。

ドングリの立場からすると、どの動物が自分の実を沢山持っていくかいなか、すぐに食べないで、貯蔵のために持っていっていくかどうかは非常に重要で、樹種によって様々な工夫がある。先ほどのリスに敬遠されたトチの実は、タンニンという成分が多く含まれ、苦みがある。この苦みをリスが嫌がりあまり食べない。トチからすると、沢山食べられないようにあえてタンニンを多く含み苦みをだす戦略をとっているといえる。

製材された板となった樹木については、多少知識があるが、生きている木に関する知識は普通の人と同じで、山歩きを趣味にしている人には到底かなわないレベルである自分にとって、初めて知ることが多かった。そういった意味で非常に勉強になった一冊である。

ちなみに「ドングリ」がなる木も無垢材家具になる木があります。

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もうすぐショールームにくる予定のこちらの天板もクリでドングリを作る木の一種です。

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