2015.06.07

木のぬくもりの正体

無垢材の家具に触れると温かいと感じることがあります。木にはぬくもりがあるといった表現をすることもよくあります。通常の状態の木が熱を発することはないので、木自体が熱いわけではないのですが、ではぬくもりの正体は一体何なのでしょう?

木のぬくもりには、熱伝導率が関係しています。熱伝導率とは、物質の中の熱の流れやすさを示す数値となります。熱伝導率の数値が低いほど、熱が伝わりにくく、熱伝導率が高い物質ほど、熱が伝わりやすいということになります。熱伝導率は、k[W/m・k]で表しますが、木材は0.05〜0.25、鉄は、83.5と数値に大きな違いがあります。鉄は木材に比べ熱伝導が早いので、手で触れた瞬間から熱が鉄に移動するので、冷たく感じるということになります。反対に、木材は熱の移動が遅いため、手の熱がとどまり温かく感じるのです。

では、木材の種類によって熱の伝わり方は変わってくるのでしょうか?

木材の種類によって、熱伝導率に違いがあります。木材工業ハンドブックによると、バルサ材:0.052、桐材:0.073、スギ:0.087、ブナ:0.14となっているようです。この数値の違いがどれほど肌の感覚に違いがあるかははっきりとしませんが、軽く感じる木のほうが熱伝導率が低いということははっきりといえます。バルサ材や桐材は、最も軽くて柔らかい材です。これらの木材は木部の組織密度が低く、空気を沢山含んでいるといえます。空気は熱伝導率が最も低いものなので、空気が多く含まれていればいるほど熱の伝わり速度は遅くなります。実際にスギやヒノキを触った感じと硬くて重いメープル材やブビンガ材を触った感じでは、少し感じる温度が違います。スギやヒノキといった針葉樹が肌触りがよく、冬でも冷たく感じにくいぬくもいう理由で直接肌に触れることが多い床材に多く使われるのも納得がいきます。

では、次に家具などは塗装による仕上げをして使うことが一般的です。塗装の違いによる温度感覚の違いはあるのでしょうか?

無垢材家具の場合、オイル仕上げとウレタン塗装の2つが代表的な仕上げになります。オイル仕上げとは、植物性のオイルが主原料の家具用オイルを木部に浸透させる仕上げになります。物質による塗膜を作らないので、触れているのは木の組織といえます。一方、ウレタン塗装の場合は、ウレタン樹脂による塗膜を木の表面に作り、木部を保護する塗装方法です。ウレタンの塗膜で木部を被うので実際に触れるはウレタン樹脂ということになります。

ポリウレタンの熱伝導率を調べてみると、0.3とありました。比較的硬い木材と比べても、約2倍の熱伝送率ということになります。このことから、オイル仕上げのほうがウレタン塗装のものに比べて、よりぬくもりを感じるといえそうです。

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このオイル仕上げとウレタン塗装の熱伝導の違いを調べている過程で、宮崎良文著の「木と森の快適さを科学する」(林業改良普及双書)という本を読みました。この本の中に、オイル仕上げとウレタン塗装の違いが及ぼす快適性への影響を調べる実験とその結果が載っています。実験は、塗装なしのスギ材、オイル仕上げのスギ材、ウレタン塗装を施したスギ材、金属の4種類を触り、その際に感じる感覚を主観評価するものです。その結果、塗装なしのスギ材とオイル仕上げのスギ材は、好きで自然な感じがするという評価になり、ウレタン塗装のスギと金属は嫌いで人工的だという評価になったと記載されています。

感覚的にはそう感じることが多いですが、主観評価する実験でも一応そのようなデータが出されているようです。

この本の中には、この実験以外にも様々な木材が及ぼす人への影響を調べる実験結果が報告されています。なかなか、マニアックな内容ですが木材の影響力を知る上では大変参考になるものが多いです。興味のある方は手にとってみてください。

賢木@吉祥寺

 

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