2015.12.02

「樹は語る」より木の奥深さがわかる一冊【No.1389】

ソリウッドは無垢材を使った家具を製作販売する家具工房です。このコンセプトは創業以来、変わることなく、おそらくこれからも変わることはないでしょう。自然素材の木材は、時間をかけじっくりと乾燥させ、人の手で丁寧に仕上げてあげると何ともいえない肌触りになります。それを触っていると、自然と安らぎ、落ち着いた気持ちになれます。言葉ではなかなか伝えづらいですが、これこそがソリウッドが皆様に伝えたい木のチカラです。

無垢材は素材となる木材になる前は、樹木として厳しい自然環境の中で生きて、子孫繁栄を繰り返してきています。家具にするには、老木となり立ち枯れたか、ヒトの手で伐採され、製材する必要があります。それは、数十年から何百年もの長い年月を生きてきたいわば命を頂くことになります。だからこそ、丁寧に仕上げ、長い年月使える家具にする使命があると考えています。

我々は、製材された木材についてはある程度の知識があります。ですが、樹木である状態については専門家ではありません。家具を使っている方も同様に木については知らない方が多いのではないでしょうか?

自分が使っている木がどのようなところで、どのように成長していることがわかればより愛着がわくのではと考えています。今日は、無垢材家具の購入を考えている方や今すでに無垢材家具を使われている方にぜひ読んで頂きたい書籍を紹介します。

清和研二 著 「樹木は語る」芽生え・能棚・空飛ぶ果実

です。

20151202 1

著者である清和氏は長年北海道、東北の森で研究を続けており、花の咲き方や種子散布の仕組みについて詳しい。本著の内容は、著者がおわりにの冒頭で述べている言葉は端的でわかりやすい。

この本は、「もの言わぬ」樹木の気持ちを代弁しているものである

ハルニレ、オニグルミ、トチ、ミズナラ、イタヤカエデなど、無垢材家具にもよく使われる樹木の成長の仕方、実がどのように芽生え、成長していくのかを樹種ごとに事細かく説明してくれている。製材された木材や森の中を少し歩いただけでは到底わかりえない、木々の生活がわかりやすい挿絵とともに、頭にすんなり入ってきて、ある人物の伝記を読んでいるかのような気持ちになる。また、樹木を擬人化した記述も目立つ。

トチノキの種子に貯蓄されている膨大な養分は芽生えを瞬く間に成長させる。(中略)このような一斉開葉は、若木になっても老木になっても続く。小さな個体も大きな個体も、みな同じように大きな冬芽をもち、大きな当年生の枝を一気にのばしながら大きな葉をのびのびと一瞬で広げる。その速さは目を見張るばかりである。(中略)トチノキは老いも若木も、またどこかで暮らそうが、同じような振る舞いをする。トチノキの辞書には「臨機応変」という言葉は存在しないようだ。かなりの頑固者だ。

これはトチノキについての記述だが、この話を読む前では、私はトチノキはどちらかというと柔軟で自由奔放なイメージを持っていた。トチは奥深い山の渓谷沿いなど一見、環境の悪いところでも大きく育つ樹木である。また、製材されたトチ材は一様でなく個体差が非常に多い面白い木目をしている。そんな特徴からなんとなく上述した柔らかいイメージを持っていた。ところが、毎年の葉を開く様、ずっと同じような方法にこだわっているようだ。

その他にも、明るい場所で次々と新しい葉を展開しながら上へ上へと成長を続けるクリ材を「楽天家」と形容し、暗い森の中でも、巨木にはなれないが長く生き延びることができるミズナラ材を忍耐強いと紹介している。

製材された木材の色味や木目も樹種によって異なるが、立木の状態でもそれぞれの性格があるというのは、興味深い。木材の世界は奥が深いと思っていたが、さらに僕らが知らない世界が森の中では日々繰りひろげられている。やはり木は面白い。改めてそう感じた。

本著は樹木の生態について書かれていますが、専門書というよりは小説のような物語に近い内容になっています。そのため、難しい記述はなく、非常に読みやすく仕上がっています。読書にはぴったりの季節になりました、普段とはちょっと違う変化球的な一冊はいかがでしょうか?

賢木@吉祥寺

お問い合わせContact

TEL:0422-21-8487
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-3 2F
(営業時間: 12:30〜18:00/定休日:火・水曜日)
お問い合わせフォーム
Facebook Twitter Instagram Pinterest