2014.12.19

あまりに普及していて素晴らしさが分かりにくいカシ材。

カシという木をご存知でしょうか?家具に使われることはほとんどありませんが、ある部分にはよく使われている木材です。

カシは漢字で書くと樫。木に堅いと書きます。もうこれだけでこの木材の特徴が分かりますね。そう堅いんです。しかしそれだけではありません。堅いうえに粘りがあるのです。木材の強度にはこの粘りが強く関係してきます。堅くても粘りのない木材は強度が高いとは言えません。逆に言うと柔らかくても粘りがあれば、耐久性はよくなります。

堅くて粘りがあるため、カシはとても耐久性に優れています。そのため、道具によく使われています。我々が日頃使っているカンナの台はカシで出来ています。カシじゃないカンナ台はほとんどありません。ほぼカシです。カシには赤ガシと白ガシがあります。赤ガシは赤茶色をしてます。しかし、流通量が少ないので目にすることはほとんどなくなりました。一般的に普及しているカンナには白ガシが使われています。

他にも、ノミの柄や玄翁の柄にもカシが使われています。カシを使うことが当たり前になっていて他の材が使われいないので、カシが優れているのかよく分からないのが現状です。

例えば、玄翁の柄をウォールナット材で作ってみたとします。たぶん見た目はシックで格好いいはずです。でも、いつ折れるか怖くて使えないと思います。ウォールナット材は粘りが少ない材として有名です。家具などになるぐらいの強度はあります。が、瞬間的にすごい力が掛かる玄翁の柄などにするのには不安なんですね。ウォールナット材にノミで穴を開けようとすると穴の際が欠けてしまうことがよくあります。繊維の結びつきが弱いので、ポロッと欠けやすいんです。

という訳で、大工道具には丈夫なカシが使われています。大工道具だけでなく、古くから伝わる伝統的な道具にはカシが使われていることが多いです。特に柄に関してはカシの独壇場です。

餅つきに欠かせない杵の柄にもカシが使われています。吉祥寺ショールームのご近所の店の人達と毎年餅つきをしています。そのときに使用している杵は先はケヤキ材、柄はカシ材です。この組みあわせが最もポピュラーな組みあわせのようです。

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2つある杵のうちの1つは先端が割れてしまっています。割れた所から木屑が落ちて餅に入ってしまうことがありました。そこでなんとか木屑が入らないようにしたいということで相模湖工房に運ばれてきました。初めは接着剤でくっつけようかと思いましたが、うまく接着しそうにないので諦めました。そこで割れた部分は取ってしまい、残った部分も滑らかに整形することにしました。

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割れた部分を取り除きました。このままではまた割れてきてしまうので、滑らかに整えます。グラインダーで滑らかにしました。
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こんな感じになりました。見た目はかっこ悪いですが、使用上は特に問題ないのではないかと思っています。あとは使ってみてどうかですね。ケヤキもかなり堅い木ですので、杵や臼に使われています。それでも使っていくうちに先端はボロボロになってきます。そうなったら先をグラインダーで削ってあげれば、また使えるようになります。木屑が餅に入ってしまう場合は臼や杵のメンテナンスをしてあげましょう。

さて、ここで1つ疑問があります。堅くで粘りがあって丈夫なカシ材を杵の先に使わないのかという疑問です。

カシはそこまで大きく成長はしません。杵とセットで使われる臼にはケヤキ材が使われることが多いです。なぜ、ケヤキかというと、堅くで丈夫で大きく成長した木がたくさんあるということだと思います。臼にするためには太い丸太でなくては駄目ですよね。カシだと臼が作られるような太さの木というのが少ないので、ケヤキが使われるようになったのでしょう。臼にケヤキを使うから杵もケヤキで作ればいいだろうとなったのではないでしょう。根元の太い部分は臼に、先の細い部分は杵にというわけです。でも、柄はやっぱりカシだねということでしょう。

ネットで検索してみると、先もカシ材が使われた杵を発見することができました。しかし、そこには”この杵は石臼で使う事を前提にしています。ケヤキ材の臼に使用すると臼が割れてしまうことがあります”と書かれていました。カシはケヤキよりも堅いから臼に与えるダメージが大きいようです。恐るべしカシ材……

最後に、先日出張で名古屋に立ち寄った時に見つけた本を紹介します。
『大工道具の文明史 日本・中国・ヨーロッパの建築技術』渡邉 晶 吉川弘文館 
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大工道具の歴史について書かれています。実際にどんな感じに道具が使われていたかを表すイラストが充実しているのが良いです。パラパラとイラストだけみるだけでも楽しめます。興味のある方は本屋で手に取って見てみてください。

瑞木@相模湖

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