2013.12.06

樺細工に使われている樹皮はカバではない!!!

先日、樹皮を使って出来たものについて調べる必要がありました。なんとなく樺細工と呼ばれる伝統工芸の存在を覚えていたので、樺細工についてネットで情報を検索しました。

すると、樺細工に使われている樹皮はカバではなくヤマザクラの樹皮という事が分かりました。カバの樹皮が使われていると思っていたので、ビックリしました。そして、あれ?もしかしてこれはあの問題に繋がるのか?と思いました。材木に詳しい方は私が思ったことについて想像がつくかもしれませんね。この事は今日のブログの後半で触れます。

さて、樺細工。秋田県角館の名産品で、ヤマザクラの樹皮を独特の技法で磨きあげ、茶筒や小箱、家具、などの外側に張って仕上げる伝統工芸です。200年以上も前に藤村彦六という人物が角館にその技術を広め、当時角館を治めていた佐竹北家の庇護の元で育まれていったとのこと。

その製作方法は手間が結構掛かるように思われます。まず、”かばはぎ”と呼ばれる専門家がヤマザクラの樹から樹皮を取ってくる。生きている樹から樹皮を剥がすのは少し残酷に思われますが、下から上まで一気に剥がすような事をしなければ、樹の成長に影響がないそうです。一本の樹でも採る部分と採らない部分を交互にして根元から採取していきます。樹皮は剥がされても再生するそうです。

採ってきた樹皮は、表面のザラザラした部分を刃物で丁寧にそぎ落とします。裏側も同様にそぎ落とします。それから木地に貼っていきます。使う接着剤は”にかわ”。動物の骨などを原料にした昔ながらの接着剤です。熱したコテを上から当てて固定させます。

さらにヤスリなどで磨きあげて、表面の艶を出していきます。

こうした手順で樹皮の面白い表情とキレイな艶がでた樺細工の製品が出来上がります。どんな物か気になる方は樺細工で検索してみてください。やはり手間が掛かっているのでそれなりの価格はしますが、その仕上がりが渋くかっこいいですよ。

先日木材市場でヤマザクラの板を仕入れました。買ってきた板はすぐに樹皮を剥がしておきます。こちらが剥がしたヤマザクラの樹皮の表側です。
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ゴツゴツした感じが格好良く、渋い雰囲気があります。

この裏側は
131206_2.jpg

うって代わってポコポコした可愛らしい雰囲気。僅か2mmぐらいの厚みですが、表と裏で全然違う雰囲気がとても面白いですね。

ところでなんでヤマザクラの樹皮を使っているのに、樺細工というのか?

いろいろ説があるようです。

1.万葉集にある短歌でヤマザクラを”かには(迦仁波)”と読んでいて、それが”かば”に転じた。
2.紫式部の源氏物語でヤマザクラを樺桜と表現している。
3.もともとすべての樹皮のことを”かば”と呼んでいた。

いろいろ調べてみると、”かには”が”かば”に転じた説が有力のようです。が、”かには”が”かば”に転じたってちょっと無理ないかなあというのが、正直ところです。

さて、あの問題です。木材業界では、カバ材の事をサクラ材と呼ぶ慣習があります。通常、材木屋さんがサクラ材と呼んでいる材はカバ材である事が多いです。最近は、カバ材をサクラ材という慣習はなくなりつつありますが、サクラ材と表記してあるカバ材を見かけることはまだあります。

カバとサクラは植物学的には別の種類です。カバ材がヤマザクラ材に似ていることからサクラ材と呼ぶことになったというのが定説です。が、見る人が見れば、カバ材とヤマザクラ材の木目は違うし、区別はつきます。ソリウッドではカバはカバ材、ヤマザクラはヤマザクラ材と表記するようにしています。

ですが、樺細工ではヤマザクラの樹皮を”樺(かば)と呼んでいます。秋田地方では、カバと言えばヤマザクラをさすという話もあります。もしかしたら、この風習が全国的に拡がったと考えることもできるのではと思ったりしました。

さらに、サクラの仲間に”樺桜”、”蒲桜”という品種があるようです。これらの種はある地方限定のようなので、材木として流通していることはなさそうです。

ちなみにカバの樹皮を樺細工にすることはできません。カバの樹皮はクルクルになって剥がれる性質があるので、細工するのは無理なのです。カバの樹皮はこんな感じです。

ねっ、クルクルでしょ。

ということで、樺細工に使われているのはヤマザクラの樹皮です。皆さん、覚えておいてくださいね。

瑞木@相模湖

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