2019.06.21

弓に使われていた木材はなんだ?

※2019年6月21日改訂 : 内容の一部を変更しました。

本を読んでいて突然知っている木の名前が出てくると、”おっ!”と思います。

思わず付箋を貼ってしまいます。

昨日読み始めたのは『戦争の物理学 弓矢から水爆まで平気はいかに生みだされたか』バリー・パーカー著・藤原多伽夫訳 白揚社 です。

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古代から現代に至るまでの戦争に使われた兵器を物理学の視点から眺めてみるという趣旨の本です。まだ読み始めたばかりですが、物理学を知らない私でも楽しく読めています。

さて、ヨーロッパの戦争でよく使われた武器にロングボウというものがあるそうです。いわゆる弓です。

でも、弓が長いのが特徴です。長いもので190cmもあったようです。このロングボウによく使われたのがイチイという木だそうです。

イチイは針葉樹で日本にも広く生えているいる樹種です。漢字で書くと”一位”だそうです。

古くからいろいろな用途に使われていた木材のようです。私自身は使用したことがないのでどんな木材か知りません。でも市場などで並んでいるのを見たことはあります。もちろん聞いたことはある樹種でしたが、弓に使われていたというのは初めて知りました。アイヌ語でイチイを表す”クネニ”という言葉の意味は弓の木だそうです。日本でも昔から弓に使われていたようです。

弓に使われるということは、折れにくい木ということでしょう。我々はよく折れにくい木のことを粘りがあると表現します。

我々が使用している木材で粘りがある木の代表がタモです。

タモ材は家具にもよく使われていますが、野球バットの素材としても有名です。バットに使われているのはアオダモという種類です。家具に使われているタモはヤチダモという種類です。アオダモとヤチダモが素材としてどのくらい性質が違うかは分かりませんが、ヤチダモも粘りがあって折れにくいです。

逆に粘りがなく折れやすいのがウォールナットですね。家具に使用する分には全く問題ありませんが、細かい部品などを作るのにはウォールナットは向いていません。繊維同士の結びつきが弱くすぐに剥離してしまいます。なので、かっこいいからといってウォールナット材でバットを製作しても実用品にはならないでしょう。ボールを打ったらすぐに折れてしまうと想像できます。

ロングボウの話に戻りますが、イチイはイングランドなどでは珍しく手に入りにくかったようです。そこでイチイの代わりに使われたのがトネリコやニレだそうです。トネリコというのはタモの仲間ですね。やはり粘りがある木が代わりに使われています。ニレは家具にも使われています。国産のニレ材も昔はたくさん流通していたようですが、今はめっきり数が少なくなりました。時々材木市場で見掛けます。ソリウッドでもニレ材のテーブルは数多く製作してきました。しかし、最近はあまり作っていないですね。やはり手に入りにくくなったのが要因です。

では日本ではどんな木材が弓に使われていたのか?

よく聞くのはアズサです。

梓弓という言葉もあるようです。ではアズサはどんな木かというと、

このブログでもよく出てくるミズメなんですね。

ミズメの別名がアズサなんです。

ミズメはヨグソミネバリという名でも呼ばれています。漢字で書くと”夜糞峰榛”になるそうです。すごい漢字です。ミズメ=ヨグソミネバリだよというのは別のブログに詳しく書いているので、興味がある方はそちらをご覧ください。

ミズメザクラはサクラじゃない。別名、夜糞峰榛(ヨグソミネバリ)というカバの仲間。

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積んである板の上の方がミズメです。ミズメはカバノキの仲間になります。木目が緻密で淡い色彩がとても綺麗な木材です。硬さや重さは結構あります。それでも乾燥をさせてしまったら、動きは少ない木です。粘りが特に強い木という印象はありませんが、弓に使われていたくらいなので、粘りがあってパキンとは折れない木であることは間違いないでしょう。

さて、弓とセットで使用される矢にはどんな木材が使われていたのでしょうか?

『戦争の物理学』には、ヤマナラシ・ポプラ・ニワトコ・ヤナギ・カバノキなど多岐にわたる と書かれています。なんだか色々な木材が使われています。特に共通する特徴があるようでもないですね。

弓に比べると矢の方はどんな木でも良かったのかも知れませんね。矢が柔らかすぎると振動が大きくなってスピードが遅くなり貫通力が弱くなるそうです。逆に堅すぎると振動は少なくなるけど、命中精度が下がってしまうようです。いろいろ木材を使ってどれがよいか試行錯誤していたのかもしれません。あるいは射手によって好みの矢があったのかも知れませんね。

今回は本の中でたまたま出会った内容を元に1つのエントリーにしてみました。昔から色々な木材が適材適所に使われていたんですね。恐らくはじめは試行錯誤をしていろいろな木材を試してみたのでしょう。そうした人々の試みのなかで適した素材が現代まで伝わっていることに”すごいな”と感じましたね、単純に。

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