2014.01.05

書評・建設ドキュメント1988-イサム・ノグチとモエレ沼公園

新年一発目のブログ。

このブログでもちょくちょく書評めいた本に関する記事を書いてきました。これまで取り上げた本のテーマのほとんどは木や林業、家具でした。今回は新年一発目でもあるので、これまでのものとは少し違ったテーマの本にしてみました。

「札幌のモエレ沼公園」

いつかは行きたいと思いながらもなかなか機会が訪れず、今日に至っている。そんな中、本屋で見つけたこの一冊「建設ドキュメント1988ーイサム・ノグチとモエレ沼公園」だ。

イサム・ノグチとモエレ沼公園

著者は実際にモエレ沼公園の設計に携わった川村純一氏と斉藤浩二氏の二人だ。題名にあるようにモエレ沼公園の大まかな設計は世界的芸術家イサム・ノグチ氏によるものであるが、ノグチ氏は図面と模型を残して、道半ば亡くなってしまっている。ノグチ氏とともに作業にと取り組んでいた著者がその後を引き継ぎ、完成に至っている。本著はそのモエレ沼公園が出来上がるまでの舞台裏を写真や記録を交えながらまとめたドキュメントである。

先ほどモエレ沼公園にいつかは行きたいと思っていたと書いたが、本著を読む前に知っていたことといえば、著名な彫刻家イサム・ノグチが設計したこと、膨大な敷地に人工的な山があること、公園内にはイサム・ノグチの彫刻が置いてあることぐらいだった。

前2つについては、概ね当たっているが、最後の彫刻については誤解があると言わざるを得ない。確かにノグチ氏がデザインした彫刻や遊具が公園内には設置されている。しかし、ノグチ氏の考えは公園に彫刻作品があるのではなく、公園そのものが彫刻であるということだ。

このことは、ノグチ氏の意思を継いだ著者たちが、公園を作り上げるにあたった貫いた考えともいえる。その具体事例が本著にも書かれている。

造景的なシンプルさをコンセプトにしたモエレ沼公園では、どうしても付けなければいけない場所以外には柵は設置しなかった。付ける場合でもひと目で転落防止柵だとわかる形にならないように工夫した。公園によくある禁止サインや注意サインも置いていない。園路に沿った手すりは、モエレ山の西側直登ルート210段の階段の一本だけである。 市からはその度に抵抗があったが、手すりを含めてすべてが彫刻であるとことをその度ごとに説明し、実際のイサムの作品をみせて事故が起きていないことを説明した。

本著を読み進めるに従い、ノグチ氏の思いとその意思引き継いだ者たちの思いと熱意が、幾多の山を超えた根底にあることが如実に伝わってくる。

読み終えてひとつ思った。モエレ沼公園に行く前に読んで良かった。

賢木@吉祥寺

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