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家具屋で働く双子のブログ
木材乾燥の基本と樹種による乾燥性格の違いについて
昨日のブログで木材水分計についてブログエントリーを書きました。もう少し木材乾燥について書きたくなりました。ちょっとマニアックな内容ですが、木材乾燥の基本的な事柄についてまとめてみます。
木材乾燥の3要素というものがあります。
1.温度
2.湿度
3.風
この3つの要素をコントロールすることが出来れば、木材をよりよく乾燥させる事ができます。各要素についてもう少し掘り下げてみましょう。
温度は高い方が木材の乾燥は速く進みます。人工的に乾燥させる場合は、温度を高くする事が基本になります。温度を高くすれば、乾燥のスピードを速めることが出来ます。人工乾燥機にもいろいろなタイプがあります。乾燥させる温度で高温・中温・低温と分けることが出来ます。高温タイプは、約100℃程度の庫内で一気に乾燥させます。高温タイプの人工乾燥機は、高温にすることで木材の木質組織を破壊してしまうデメリットがあると言われています。
中温タイプは60℃から70℃の庫内で乾燥させる木材乾燥機です。普及している人工乾燥機はこの中温タイプが多いと思います。ソリウッドにある蒸気型の木材乾燥機のこの中温タイプに入ります。最高温度を65℃に設定して約2週間で乾燥させます。
低温タイプは30℃から45℃程度の温度でじっくり木材を乾燥させる木材乾燥機です。ソリウッドの自前で製作した乾燥庫はこのタイプです。乾燥時間は長く掛かりますが、木材への負担が少なく済むのが良い点になります。
次に湿度です。天然乾燥においては湿度が重要になります。乾いた空気の中に置いておいた方が速く乾燥します。同じ場所に積んでおいても、湿度が高くなりがちな地面に近い下の方にある板の方が乾燥速度は遅くなります。速く乾燥させたい板は、上の方に積んだ方がよくなります。
地域によっても木材乾燥に適した場所というのがあります。高原などの乾いた空気に囲まれた地域は木材乾燥に適しています。逆に海や川の近くなど湿った空気が流れる場所は、乾燥の速度が鈍くなります。
風も天然乾燥において、その乾燥度合いに大きく関係してきます。風通しの良い場所に置く方が乾燥は速く進みます。風が通る方向に合わせて木材を積むことも重要です。せっかく風通しが良い場所でも板を積む方向を間違えると風が通り抜けなくなってしまいます。天然乾燥だけで乾燥させようとした場合は、風向きを考えて桟積みしておく必要があります。風通しの良い場所と悪い場所に2年から3年置いておけば、乾燥具合に大きな差が出るはずです。
含水率の変化の経過が分かるようにした実験結果。白い数字が乾燥させる前の含水率。赤い数字が木材乾燥庫で乾燥させたあとの含水率。
以上は木材乾燥の基本的な3要素について書きました。しかし、木材という天然素材は樹種によっての乾燥の進み具合などが異なります。乾燥しやすい樹種、乾燥しにくい樹種、乾燥に伴って割れが大きい樹種などいろいろと性格が異なります。木材乾燥を成功させるためには、これらの性格の違いを把握しておくことも重要です。これまで乾燥させた経験で樹種による差がなんとなく分かってきました。
乾燥させやすいと感じたのはトチ材です。トチ材は他の材と比べて含水率の低下が速いです。10%以下にするにもたいして時間が掛かりません。水分が抜けることによる変化も少ないです。木口から大きな割れが入るケースも少なく、ネジレや反りも少ないです。ただ、水分が抜けるのも速いですが水分を吸うのも速い気がします。人工乾燥庫で8%ぐらいに下げた板も乾燥庫から出してしばらく室内に置いておくと、12%ぐらいになります。周囲の湿度の影響を強く受ける樹種と言えるでしょう。
乾燥が厄介と言われる代表格は、ナラ材です。ナラ材は割れが入りやすい樹種です。特に板目に製材した板が割れる確率はかなり高くなります。1枚板テーブルになるような幅広いナラ材はだいたい大きめの割れが入ります。材木屋さんによっては、ナラ材の板目は割れが入るので敢えて板目に製材することを避けるケースもあります。比較的に割れの入りにくい柾目だけ製材する製材所が多いです。従って、割れのない幅広いナラ材はとっても貴重です。乾燥前のナラ材で割れがない板でも、乾燥すると割れが大きく入る可能性が高いので注意が必要になります。
なかなか水分が抜けないのがウォールナット材です。辺材と呼ばれる周辺部の白い部分の水抜けは異常に速いですが、色の濃い心材部分の水抜けがとっても遅いのです。なので、辺材の含水率が10%以下になっているからもう乾燥していると判断するのは危険です。辺材の含水率が8%でも心材の含水率が20%以上あることもざらにあります。ウォールナット材の含水率を計測するときは必ず板の中央部分を計るようにしてください。ただ、一度水分が抜けると、元に戻る力は弱いです。乾燥庫から出してしばらく室内に置いた板でも、含水率が10%以下でほとんど変わらない場合が多いです。先に挙げたトチ材とは反対の性格を持っていると言えます。
長くなってしまったので、この辺で終わりにします。樹種ごとの乾燥性格の差についてはもう少し語れる部分もあるのでまたの機会に他の樹種について書きたいと思います。
瑞木@相模湖
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