2015.08.25

加工途中の無垢材は横に立てて置いておくのが基本です。なぜなら…【No.1290】

なんだか夏も終わりの雰囲気になってきましたね。このまま秋になるとは思いませんが、予想外に気温が上がらず過ごしやすい日が続いています。家具製作現場では、天候って気になる要素なんですね。無垢材という自然素材を相手にしているので、気温や湿度を気にしながら作業しなければいけない時もあります。特に梅雨から夏場にかけては木材の管理は重要になってきます。

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こちらはシーズニングといって、木材を落ち着かせている過程です。木材は削って薄くした際に反りが生じる可能性があります。そのため、いきなり仕上がり寸法まで削ってしまうと反ってしまい、仕上がり寸法で仕上がらなくなる場合があるんです。それを防ぐために、少し厚めに削った状態で力を解放させて落ち着かせます。何日かこの状態で置いておいてから実際の作業に入ります。

加工中の木材の保管にも気を遣わなければいけません。基本は常に表裏の両面がおなじ状態で空気に触れているようにします。なので、上の写真のように立てて置くのが普通です。どうしても重ねて置かなければいけない時は、重ねてそれ自体を毛布などでくるんで空気に触れないようにします。横にして机の上に置いておくのが1番良くない保管方法です。こうして置くと、上面だけが空気に触れて乾燥します。片面だけ乾燥するとバランスが崩れて反る要因になってしまいます。もちろん、完全に反りを無くすことは不可能ですが、なるべくそういった事態にならないようにベストを尽くしています。

鉋(かんな)の保管方法も同様です。やはり立てて置きます。鉋の場合は理由が2つあります。一つは刃を傷つけないようにするため、もう一つは台が狂わないようにするためです。

鉋という道具は裏側に刃が出る仕組みになっています。そのため、裏面を下にして置くと刃が傷ついてしまいます。刃に傷がつくと当然切れ味が悪くなってしまいます。なので横に立てておくようにしています。鉋掛けが終わってしまう時に同様に立てて置いておくのが好ましいです。その際は刃は出ていない状態にしておきます。でも、鉋台から刃を取り出して保管することはしてはいけません。刃を抜いた状態で保管しておくと、台が狂って刃が入らなくなる恐れがあるからです。

鉋の台も木製です。通常はよく乾燥させたカシノキを使用します。カシは木へんに堅いと書いて樫です。漢字が表す通り、堅い木です。もちろんカシより堅い木はあります。でも日本に生息している木のなかでは1番堅い部類に入るでしょう。昔の人はちゃんとカシノキの性質を理解して、丈夫さが求められる所にカシノキを使用していました。道具の柄によく使われています。大工道具の他にも農耕具にもカシノキがよく使われていました。鎌などの柄はカシノキが使用されています。

台が木で出来ているので、環境によって台の形状が変化する可能性があります。裏面を下にして鉋を置いて長期間置いておくと表と裏での乾燥具合が変化して台が動くと思います。鉋台の裏面は、綺麗に削るためにはシビアな調整が必要です。そのため、台が大きく動いてしまうと修正に時間が掛かります。なので、台に変化が出ないように両面を同じように空気に触れさせておくことが重要になってきます。

今日のブログエントリーはかなりマニアックな話になってしまいましたね。でも、無垢材家具製作現場で行われている日常を掘り起こしてみるとこんな感じの話になってしまいます。単純な話ではありますが、現場を知らない人にとっては新鮮な事かもしれないと思って書いてみました。無垢材を扱うということは木の性質をよく理解していないと出来ません。そこが難しさでもあり、楽しさでもあると思います。

瑞木@相模湖

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