2020.01.19

◎「節」は本当にダメですか。

毎週金曜更新のはずの「姉ブロ(家具屋で働く双子の姉のブログ)」ですが、今日は日曜日です。よろしくお願いします。

今日は結論を先に書きます。お忙しい方は最初だけ読んでください。では始めます。

無垢材のダイニングテーブルについて考えるとき

・節は欠点ではない、特徴だ。

・特徴をいかに「魅力」にアップグレードするかが、カギ。

どうしてそう考えるのか、解説します。お時間に余裕のある方はぜひ引き続きお読みください。

 

節は欠点ではない、特徴だ。

家具業界には「節は欠点だ」、「節がない天板は美しい、よいものだ」という捉える傾向があります。家具に限らずいろいろなモノを判断する際に私たちは「これと言って目立った箇所がない、均一的なものが美しい」とすることがあります。日本人は特に「きれいにそろっているもの」が好きなのかもしれません。スーパーには均一して大きさも色もそろった野菜がきれいにパッケージに入って並んでいます。学校では「みんなと同じ」がいまだに良しとされることがあります。卒業式の証書の受け取り方やお辞儀の角度、運動会の入場行進をピタッと合わせる練習を、子どもたちは日々繰り返したりします。「そろっている」ことは大事なこと、いいこと、とする文化があるのでしょう。おそらくそういう文化があるからテーブルも木目がきれいにそろっていて、節などが入っていないものが「美しいもの」「価値があるもの」とされてきたのかもしれません。

でも、現代社会を生き抜いておられる、本質を見極められるそこの紳士淑女のみなさま(あなたのことです!)ならもうおわかりですね。このご時世、均一化された、そろったものだけがいいわけではありません。

畑で野菜を育てたことのある人なら、野菜が自動的に均一的な形になるわけではないことを知っています。自家栽培をするとびっくりするくらい不細工な野菜が育つことがあります。ではなぜわざわざ自分の時間と労力をかけて不細工で不揃いな野菜を育てるのか。それは均一的なことが野菜の価値ではないと知っているからです。不揃いであっても採れたての野菜は美味しいことを知っているからです。

学校ではみんな心のどこかで「なんで卒業証書を受け取るときのお辞儀の角度をこんなに練習するんだろ」と疑問に思っている(いた)はずです。あんなに練習を繰り返した運動会の行進が「運動会の忘れられない思い出」になっている人も少ないはずです。なぜか。それは一律の動きはそんなに重要ではないからです。みんなでそろって行進すると、少しは一体感が感じられて快感があるかもしれませんが、それよりも、人知れずコソ練して徒競走で一番になったとか、リレーで大逆転をしたとか、細やかな作戦を練ったおかけで騎馬戦で相手チームを負かしたとか、たぶんそういうことの方が思い出に残っているはずです。そっちの方が価値があるからなのだと思います。

話を戻しましょう。テーブルの天板です。

均一的な模様の、これまで「美しい」とされていたものは、見た目に美しいことは確かなので、引き続き価値があるものとして扱われるでしょう。ソリウッドでもそういう天板も引き続き作ることでしょう。では、均一的な模様ではない天板(たとえば節が入っているテーブル)は価値が低いのでしょうか。「ダメ」なのでしょうか。

節は枝がはえていたところです。枝のない木なんてありえません。つまり節のない木はほぼありえないのです。山に入って、枝のない木を探すのはほぼ無理ですよね。(建材にするための針葉樹では節が残らないように枝を切り落としながら成長させることはあります。)「節」についてはこれまでもこのブログで双子が書いてきましたので、よろしければ検索してみてください。

(たとえばこちら。 https://www.soliwood.com/blog/post_1151/

つまり、カタチは不揃いだけれど味はまちがいなく美味しい野菜があるように、私たちが学校で「みんなそろっていること」に疑問を覚えたように、かならずしもそろっていることだけが「いい」のではないのです。

いまソリウッド吉祥寺ショップで展示しているこちらのクルミ材耳つきテーブル。「マイルド&ワイルド」とうたっているように、マイルドでやさしいクルミ材の特徴を保ちつつ、この木は「枝葉を伸ばして生きていたのだ!」というワイルドさも感じられるようあえて「節」をいれてあります。いったいどうしたらこの生きた証を「欠点」などといえるでしょう。

 

特徴をいかに「魅力」にアップグレードするかが、カギ。

さて現代社会を見事に生き抜いておられる、本質を見極められる紳士淑女のみなさまは、もう節が入っている天板は劣っているわけではない、そういう特徴なのだ。個性なのだ。ということは重々ご承知のことと思います。

続いてもう一つの今日私がお伝えしたいことに移ります。こっちはそんなに長く書きませんのでもうしばらくおつきあいください。

節=欠点ではない。だからといってやたらめったら節の部分を接ぎ合せて天板にすればいいいということでもありません。(あたりまえですね。)板のどの部分をどのように接ぎ合せるか、ということが非常に大事になってきます。

考えてみたら節(もしくは同等の個性)をすっかり省いた板を接ぎ合せるほうが、よっぽど簡単だともいえます。「作業」をだけすればいいのですから。節を切り落として、残った部分を接ぎ合せて天板をつくる作業は、もしかしたら数年後はAIがやってくれる仕事になっているかもしれません。ルールが明確なのでむしろAIの得意分野でしょう。

こちらもクルミ材の耳つきテーブル。こちらは共木(ともぎ)といって同じ丸太から採った3枚の板を接ぎ合せたものです。幅の広いクルミの板を入手しづらくなっている中、工房スタッフが「同じ木から採れた3枚接ぎのテーブルを作る」ことにこだわって製作した天板です。幅のある板を使わないと3枚はぎの天板は作ることができません。この天板にも「節」が入っていますが、もし「節」を省いてしまっていたら3枚接ぎの天板はできなかったのです。

ソリウッドの工房スタッフは生身の人間です。なので、機械的に「節」を切り落としてしまうような仕事はいたしません。丸太をみて、板をみて、節をみて、その特徴をどう接ぎ合せたらかっこいい、美しい、魅力のある天板になるのかを考えます。切り落としてしまってから後戻りはできないので、これは本当に長年培われた勘とセンスが必要です。言ってみたら素材をどう調理したら美味しい料理ができあがるのか、そういう能力がないとソリウッドの工房スタッフは勤まらないのです。特徴を魅力にアップグレードする能力が必要なのです。いま、完成品としてソリウッド吉祥寺ショップに並んでいるテーブルは、職人の勘とセンスと知恵と技術を集約して出来上がったモノなのです。ぜひ一度実際にご覧ください。ソリウッド吉祥寺ショップでお待ちしてます!

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