2014.06.16

『法隆寺を支えた木』を読んでみた!

最近はネットショップで本を買う事が増えました。午前中に注文すれば、その日の夜に配達してくれるショップもあったりととても便利になりました。でも、時間があると本屋さんを覗く習慣は変わっていません。そんな習慣で本屋さんに立ち寄った時に見つけたのがこの本です。

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『法隆寺を支えた木』西岡常一・小原二郎 NHKBOOKS

「あっ、NHKBOOKSが改装されている!」と思って棚を眺めていて、平置きになっているこの本を見つけました。NHKBOOKSは随分とスッキリした装丁になりましたね。

初版の発行は1978年6月20日です。36年前に書かれた本です。私が手にしたのは、2012年6月25日発行の87刷りでした。87刷りは凄いですね。かなりのロングセラー本。全部で7章立てで、そのうちの第1章が西岡常一さんが担当、他の章を小原二郎さんが執筆しています。

その名前を聞いた事がある人も多いと思いますが、西岡常一さんは法隆寺や薬師寺の修復工事を取りまとめて”最後の宮大工”と言われていました。本や映画などでも取り上げられることが多いので、有名な宮大工さんですね。1995年に亡くなられています。

小原二郎さんは千葉大学工学部建築学科の教授として活躍された方で、専門は人間工学、住宅産業、木材工学だったそうです。

法隆寺を支えた木はヒノキです。ヒノキは日本産の木材でも非常に優秀な材として有名です。法隆寺の柱はヒノキをヤリ鉋で削っています。ヤリ鉋は三角のような形状をした刃物が柄の先についている道具です。カンナと言えば、四角い木の台の形をした道具という印象が強いと思います。しかし、木に刃を嵌めたカンナ(台カンナ)の登場は比較的新しいとされています。室町時代に登場して、江戸時代に熟成された道具だそうです。それまではヤリガンナが使われていたのです。ヤリガンナはあまり効率が良くなく、台カンナに比べても2倍ぐらいの力と時間が掛かると言われています。ただその仕上げ面は滑らかで味があるそうです。ヤリガンナを掛けた面は平たいスプーンでつくいとったような曲線の連続になります。台カンナで仕上げた直線的な仕上がりとは違う雰囲気になります。

2章以降は、小原さんが木について専門的な解説を含めて語っています。普段から木を扱っていますが、学術的な知識はほとんど持っていません。専門書を読むのは気が引けますが、この本では基本的な事を知ることができるので、木工を目指す学生さんなどにもオススメしたいです。

35年以上前に書かれた本ですが、今でも十分に通用する内容です。逆にいうと、今はもうこういう内容の本を書ける人が居なくなってしまったとも言えます。宮大工の西岡さんは経験に基づいた木について語り、小原さんは科学的に木について語っています。木を扱う経験に富んだ人物が少なくなってしまった今ではほんとに貴重な文章です。木について知りたい方にはオススメです。

瑞木@相模湖

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