2014.03.08

大鋸による製材は、無駄が少ない製材方法だった。

現在は丸太を板にするのに製材機を使うのが当たり前な時代です。しかし、製材機がない時代は、木挽き職人と呼ばれる人が製材をしていました。彼らが使用したのは、大鋸(おが)と呼ばれる大きなノコギリです。大鋸を使って、1枚1枚製材をしていました。

そんな木挽き職人の世界を知るための一冊を今日は紹介します。

『木を読む 江戸木挽き、感嘆の技』語り/林 以一 語り書き/かくまつとむ 小学館文庫

最 後の木挽き職人と言われていた林 以一さんが語った話をライターのかくまつとむさんがまとめた本です。単行本が発売されたのが、1996年。文庫本の発売が2001年になります。少し古い 本ですが、木挽きという仕事を知る上では重要な話がたくさん語られています。残念ながら文庫本も絶版になっているようです。

かつての木材 の中心地、木場の周辺には300人ぐらいの木挽き職人がいたそうです。この本が発売された当時で、全国に10人に満たないと書かれているので2014年と なった今ではほとんどいないはずです。文庫版のあとがきで登場してくる弟子のHさんが現在は唯一の木挽き職人でないかと思います。

部屋の掃除をしていて出てきたこの本。今一度読んでみると、”木挽き職人はすごい”
と改めて思いました。僕が面白いなと感じたポイントを3つ挙げてみます。

1分厚の板まで大鋸で挽く。
樹齢800年のケヤキを45日かけて挽いた。
上等な神輿は空洞のあるケヤキで作る。

大鋸による製材は無駄が少ない製材方法だった。

1 番驚いたのが1分厚の板まで製材できるという話です。1分というのは約3ミリです。そんな薄い材を鋸で製材していたなんて、ほんと驚きです。製材機でどの ぐらいの厚みまで製材できるのか分かりませんが、ここまで薄い板にするのはとても難しいと思います。本書の中で林さんも語っていますが、製材機での製材は ロスが多いそうです。木挽きが大鋸で挽けば、鋸の厚み分だけのロスで済みます。高価な木ならば、1ミリも無駄にはしたくないと。製材機にミリレベルの要求 をするのは無理だけど、それに応えることができるのが木挽きなんだと林さんは語ります。

また、歯が高速回転する製材機ではむしり取るように歯が進むため、表面が毛羽立ちます。木挽きが挽いた板ではこうならないそうです。鉋をかけなくても、そのままテーブルになるほど断面は綺麗なんだそうです。これはすごい。鋸だけで仕上がるなら言うことありません。

幅4メートルのケヤキ材!

多 くの丸太を手掛けた林さんの中で印象に残るのが、樹齢800年のケヤキ。昔は立っている木の段階から木挽き職人が伐ることもしていたそうです。生えていた のは、奥多摩湖湖畔。斜面で搬出が難しく小分けにしなければいけませんでした。その木の根元近くから採った2枚の板は幅が約4メートルあったそうです。普 通の大鋸では届かないため鋼板を溶接して特別に長くした大鋸を使っていたそうです。一本の木に掛かったのは都合45日。

幅4メートルのケヤキの板なんて見たことありません。巨大過ぎます。昔はこんな木もあったんですね。

御神輿は空洞のある木から作ると良い。

大 きな木は中にウロと言う空洞ができている場合があります。ウロがあると幅広い板が採れないため、その値打ちは下がってしまいます。しかし、空洞の外側を取 り巻く部分に質は、若い木とは比べものにならないぐらい良いそうです。柔らかすぎず、堅すぎず、加工するのがしやすいそうです。材質も安定していて狂いが 少ない。そのため、御神輿を作るときは、わざわざ空洞のあるケヤキを使っていたそうです。御神輿は、代々使うものだけど、使わない時は蔵に入れっぱなしと 保存条件はよくありません。お祭りによっては水を掛けたりもするから、安定して狂いにくい材を使わないと駄目なんだそうです。

なるほど。ウロがある木にも使い途がちゃんとあったんですね。

絶版になっていますが、ネットで古本を検索すればすぐにヒットします。興味がある方は探して、読んでみてください。

瑞木@相模湖

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