2013.11.17

「木工ひとつばなし」

今日は読書の秋にぴったりな一冊を紹介しようと思います。

長野県安曇野市で家具工房を営んでいる木工家 大竹收 (おさむ)さんが書いた「木工ひとつばなし」です。もともとは大竹さんが営んでいる大竹工房のWebサイトに掲載されていた木のことや家具のことに関する記事をもとに加筆・修正したエッセイ53話がおさめられています。

木工ひとつばなし

大竹さんは今でもブログを頻繁に更新していて日々の作業などが写真とともにつづられています。更新が頻繁にある読んでて楽しい木工ブログです。

さて、「木工ひとつばなし」に話を戻しますが、この本を読んでいると個人や規模の小さい家具工房はやはりその人の持っている「思い」が大切だということがひしひしと伝わってきます。

例えば、「材料で勝負する木工」では、大竹さん独特の考え方は書かれています。一般的には美しい木目が出ているもの、玉杢や鳥眼杢などが出ているものを「銘木」と呼び稀少価値があるとされています。ところが大竹さんは、銘木にてついてこのように書いています。

銘木を使うことに消極的でした。銘木に限らず、ムクの大板など、材に希少価値があり、材そのもので値段が取れるような仕事、いわば「材料で勝負」というような仕事には、抵抗があったのです。

大竹さんはエンジニア時代に体験したある出来事から人間が創りだすものだという観念からそう思うようになったようです。またもう1つの理由として、

家具というものは実用品であり、アート作品では無いという認識を持っていたこともあると思います。

と述べています。

しかし、そんな大竹さんも木工をはじめてからしばらく経ったころを境に、銘木を忌み避ける自分の姿勢に疑問を感じ、銘木でもなんでも美しい材は喜んで使う姿勢があっても良いのではと思うようになったようです。

個人的には大竹さんの書かれていることには共感します。板は、節や割れの欠点がないものが価値が高いとされます。しかし、欠点がある板でも部分的にみれば綺麗な木目もあります。1枚板でなくても、良いところを選んではぎ合わせることで、1枚板とひけをとらない綺麗なテーブル天板が出来上がります。こうする工夫をすることが木工の楽しさでもあり、小さな家具工房が作り出せる価値だと考えています。

もう1つ私が興味をもった話について書きます。

「男性的な木と女性的な木」で大竹さんは木材の分類について、こう書いています。

環孔材は男性的であり、散孔材は女性的な表情をしています。

ー中略ー

環孔材は木目が明瞭で荒々しい、あるいは激しい印象を受けます。それを男性的と呼ぶのも、一理あるでしょう。散孔材は穏やかで柔和な雰囲気を持っています。それを女性的と表現するのが当たっているように思います。

これの分類方法を、私は初めて知りましたが、なかなか説得力がある感じがします。また、男性的、女性的と区別をつけられる素材の面白さと奥深さを改めて感じました。

この他にも、木や家具作りについての著者なりの考えがわかりやすい文章でまとめられています。木工を仕事にしている人だけでなく、木が好きな人や無垢材家具を探している人が読んでも楽しめる一冊だと思います。

賢木@吉祥寺

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