2013.09.06

寂しい未来はごめんです。−国産無垢材の現状−

9月3日のブログに世界各地から日本に木材が入ってきているという話を書きました。では、国産の無垢材はどうなっているのかを今日は見ていきます。

まずは幅広い材があるケヤキ、トチから見てみましょう。昔から国産広葉樹を引っ張ってきたのが広葉樹の王様と呼ばれるケヤキ材です。広葉樹といったらケヤキは外すことができないマストなアイテムでした。ケヤキ専門の材木屋さんも多くありました。ところが、ここ数年ケヤキ人気が低調で売れない材として扱われるようになってきてしまいました。低調な理由としてよく聞かれるのが、「和風っぽい」という点です。大都市を中心に和室のある住宅が姿を消しいます。マンションもひと昔は一部屋が和室という仕様が当たり前でしたが、近年和室のあるマンションは少なくなっています。こうした住環境の変化が、材を選ぶ消費者の感覚を変えてきています。

一方、トチは相変わらずの人気を保っています。トチ材も拭き漆で仕上げると「和風」になります。しかし、近年主流のオイル塗装ではそれほど「和風」にならず、繊細でキラキラしている木目も少々荒っぽい木目も人気があります。トチは丸太の外の方は白褐色または黄褐色で、内側は赤褐色をしています。一般的には白い部分が綺麗で人気があります。しかし、赤褐色の部分もワイルドな木目がでますので、こちらを好む人も多くいます。

130906_1.jpg 
トチは幅広い一枚板テーブルで有名ですが、少し狭い2枚を接ぎ合わせることで一枚板テーブルにはない木目を楽しむことが出来ます。

130906_2.jpg
こちらもトチの2枚はぎテーブル。入り皮という欠点を逆に利用して面白い柄に仕上げてみました。

私が仕入れに行っている木材市場はケヤキ・トチが中心の市場でした。しかし、現在はケヤキの値段が低迷していることもあって、中心は外国産木材に移ってきています。ただし、良質のケヤキ板はしっかりとした値段がついているように感じます。値崩れがひどいのは、細い材や欠点のある材です。こういったケヤキは買い手がなかなか見つからない状況になっています。このケヤキ低調の流れが一時的なものか、今後もずっと続くのか、日本の広葉樹界にとっては注目されるイシューです。

さらに、ケヤキ・トチは1枚板テーブル用に生産され、製材されています。外国産広葉樹のように幅150mmから200mmぐらいの耳裁ち材の生産はほとんど行われていません。これも安定供給の面からすると不利に働いています。(当然、太く育つ材種を早めに伐採してしまうのはもったいないという側面もあります。)

今まで日本の広葉樹生産現場はケヤキ中心でした。そのケヤキが不調となると、現場の士気はどんどんと下がっていってしまいます。ケヤキを伐採しても儲からない状況が続くのは日本の広葉樹生産現場を壊滅させてしまう恐れを多く含んでいます。

その他の材種についてもあまり明るい要素は見当たりません。どの市場でも木材の質、量ともに年々低下してきていると言われています。国産材の良材は本当に少なくなっています。まだ、森の奥には大きい樹も生えていると思われますが、それを伐採して運んできて、元が取れるかというとそうでもないようです。日本の山地は険しい山が多いので、伐採するのは危険が伴い経費もかさむようです。

 外国産の広葉樹木材と比べると日本の広葉樹は1点もの扱いが多い気がします。同程度の品質の木材も持続的に供給できる環境作りが北米やロシアは優れています。日本も持続可能な森林作りが求められていますが、現状としてかなり厳しいようです。林道の整備、最新機械の導入、用地の確保に多大な費用が掛かるため、こうした環境作りが思うように進んでいないと聞きます。

でも国産広葉樹にも素晴らしい材種があります。外国産と比べても木目の多様さ、複雑さなど十分に戦える材はあります。外国産木材しか手に入らなくなってしまう寂しい未来はごめんです。木を扱う者の端くれとして出来る事はしていきたいと思っています。

瑞木@相模湖

お問い合わせContact

TEL:0422-21-8487
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-3 2F
(営業時間: 12:30〜18:00/定休日:火・水曜日)
お問い合わせフォーム
Facebook Twitter Instagram Pinterest