2016.11.14

拭き漆という方法で漆が塗られた木製品は木目も活きてメンテナンスも不要です。【No.1737】

先日書いたオイル仕上げの木のお皿やカトラリーのメンテナンスについてのブログがよく読まれています。皆さん、結構関心があるようですね。まだ読んでいない方はこちらからどうぞ。

木のお皿やカトラリーのメンテナンスにサラダ油やオリーブ油は使ってはダメなの?

サラダ油やオリーブ油は不乾性の油です。なのでたくさん塗りすぎてしまうとベタツキが残ってしまいます。もし、こうした不乾性の油でメンテナンスを行う場合は少量の油をよく伸ばして塗ってください。そして、綺麗な布でよく拭いてください。ベタツキが気になるという方はセオリー通りに荏胡麻油や亜麻仁油などの乾性の油を使用してください。

食用の油でなくてよいのでもうすこし耐水性のよいものがいい人にはこちらをお勧めします。

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アメリカのHOWARD社が発売しているブッチャーブロックコンディショナーという木製品用のワックスです。食用油よりは耐水性に優れています。オイル仕上げの木のお皿やカトラリーに塗れば耐水性が少しよくなります。もともとカッティングボード用に開発されたワックスのようです。アメリカ食品医薬品局(FDA)の基準をクリアしていて、口にいれても安全とされています。ネット通販で購入することができます。ソリウッドで製作して販売しているカッティングボードは最後の仕上げにブッチャーブロックコンディショナーを塗っています。食用油を塗るだけよりも耐水性が上がって、水をはじくようになります。ただ、オイルと同様に塗膜をつける塗料ではないのでだんだんと抜けていって効果は落ちていきます。ブッチャーブロックコンディショナーを塗った場合も定期的に塗り直すメンテナンスが必要になります。

オイル仕上げの木製品はどうしても定期的なメンテナンスが必要になってしまいます。メンテナンスが不要な塗装方法として漆があります。漆はウルシ科のウルシという木の樹液です。漆は固まると熱や水に強く、腐敗や虫喰いを防ぐ効果もあります。天然素材を利用していながら塗料としてとても効果が高いです。昔から木工製品に漆が塗られています。

漆というと輪島塗りで有名ですね。輪島塗りは”塗りうるし”という方法で黒や赤の顔料を混ぜた漆を幾度にも重ねて塗っていく方法です。布で補強したりして漆を塗っていきます。何度も重ね塗りをするので木目は完全に見えなくなります。行程がたくさんあり、複雑で時間が掛かるため”塗りうるし”の木製品はとても高価になります。漆塗りに関しては様々な資料がありますので興味がある方はそうした本を一冊読んでみると良いでしょう。

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こんな漫画もあります。輪島塗りの修行や寺社建築の漆職人など漆関係の仕事をしていた堀さんが描いた漆を題材にしたギャグ漫画です。ギャグ漫画ではありますが、漆についていろいろと知ることができます。漆について気軽に読める入門書としてオススメします。

漆の塗装方法にはもうひとつあります。拭き漆という方法です。木工家が製作しているお皿やカトラリーで漆で仕上げられているものの多くはこの拭き漆という方法で漆が塗られています。拭き漆は、生漆を塗って拭き取ってから乾燥させる行程を3回ほど行います。手間はそれなりに掛かりますが、塗り漆よりは生産コストが下がるので比較的リーズナブルな価格で売られています。拭き漆だと木目が活きるのもメリットです。ただし、色は漆色になってしまいます。どんな樹種に塗っても濃い茶色になります。本来の漆は無色といわれていますが、現在普通の人が手に入れることができる拭き漆用の漆は中国産です。この中国産の漆を使用すると茶色くなるそうです。拭き漆でも顔料をまぜて黒や白などの色をつけることも可能です。

拭き漆が塗られたお皿やカトラリーは耐水性がありますので、特にメンテナンスをする必要はありません。メンテナンスをしたくないけどウレタン塗装されたものは嫌だという人は漆で仕上げたものを探すと良いでしょう。

瑞木@相模湖

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