2016.10.14

木のスプーンが作りたくなる本、『The ARTFUL WOODEN SPOON』(邦題:『森と木とスプーン』)の紹介。【No.1706】

今日は一冊の本を紹介します。『The ARTFUL WOODEN SPOON』(邦題は『森と木とスプーン 木製スプーンをこしらえるレシピ』)です。アメリカの木工作家、ジョシュア・ヴォーゲルさんが書いた本で、日本語訳は佐伯誠さんです。正直に言うとジョシュア・ヴォーゲルさんも佐伯誠さんもこの本を手にするまでは知りませんでした。本を出すぐらいの人ですからアメリカでは有名な方なんだと思います。日本では知る人ぞ知るといった方なんでしょう。少しネットで調べてみると日本でも取り扱っているお店が少しあるようです。グループ展なんかも開かれたことがあるみたいですね。

家具デザイン会社を立ち上げてビジネス的に成功したあとにNY郊外に移って田舎暮らしを始めた方のようです。元々はデザインで仕事をしていただけにこの本に写真が載っているスプーンはどれも格好いいカタチをしています。そして様々な形のスプーンを製作していますね。正直に言うと使いにくそうなデザインのスプーンもありますが…実際使ってみるとしっくりくるのかもしれません。

日本語訳を担当しているのは佐伯誠さんです。本の中に訳者のプロフィールがないのでどんな方なのか分かりません。木工関連の方なのかとも思いましたがそうではないようです。ネットで検索してみると、ANAの機内誌『翼の王国』で連載をしていたこともあるライターさんとのこと。Amazonで検索してみてもヒットする著作はありませんでした。翻訳を担当している本がもう一つヒットするだけです。なので、翻訳家というわけでもなさそうです。

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本屋さんで偶然見つけた本ですが、購入しようと思ったのは冒頭に書いてあった文章が心にとまったからです。

“YOU CAN ALWAYS REMOVE MORE WOOD,BUT YOU CAN’T PUN ANY BACK.”(木を伐ることはいくらでもできるけれど、それを元に戻すことはできない。)

当たり前のことですけど、この言葉に含まれた意味はとっても重くて深いものがありますよね。特に私は木という素材を使うことで生活をさせてもらっているので余計に心に染みてきます。もちろん、木を使って生計を立てていない人でも木にお世話になっていない人間はいません。なので全ての人間にとって、木について考える必要があるのではないかということをこの言葉をみて考えました。

内容的には邦題の副題にあるように、木製スプーンをつくるためのどうすればよいかを教えてくれるHOW TO本です。でも、文章が文学的かつ哲学的なので、いわゆるHOW TO 本とは違っています。読むだけでも充分に楽しめます。また、所々に”translator’s view “というコーナーがあるのも特徴的です。翻訳本には訳者あとがきがあるのが普通になっていますが、この本ではあとがきではなく、内容の一部になっているところが面白いですね。

そして嬉しかったことは、”translator’s view “で乾燥のことに触れてくれたことです。しかも2度も。このブログを継続的に読んでくれている方は知っていると思いますが、私はなんども木材乾燥についてのエントリーを書いています。木を使う上で乾燥という行程はとても重要です。しかし、今では材木屋さんですでに乾燥をした木材を簡単に購入することができます。木で何かを作っている人でさえも乾燥について何も知らない、分からないという人も多いです。そんな状況なので、故・早川謙之輔さんの言葉を用いて木材乾燥について取り上げてくれているのが嬉しかったのです。そして良い文章を知る事ができました。

「作ろうとするものの用材に”今”使える板・木が、私にとって真の『材』である。つまり、乾燥ずみの木が『材』だと私は思っている」

木を削るのはとっても楽しいです。そして自分で使えるものが出来るという喜びがスプーン作りにはあります。この本を読むとスプーンを作ってみたいなという思いが強くなると思いますよ。本格的にたくさん作るにはいろいろな道具があった方が便利です。でも、自分で使う分だけ作るなら手で挽く糸鋸と小刀と丸鑿があれば作ることができます。

より具体的な作り方が知りたい方には『木でつくる小さな食器』渡邊 浩幸 河出書房新社 がオススメです。

瑞木@相模湖

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