2015.12.19

乾燥中の板の含水率を定点観測していると面白い。【No.1406】

新設の木材乾燥庫を稼働させています。ソリウッドでは人工乾燥済みの板を使用するようにしています。天然乾燥だけだと含水率が必要水準まで下がらないからです。乾燥材の定義は曖昧で、構造材などは含水率20%以下なら乾燥材とみなす場合もあるようです。しかし、室内で使用する家具に使う木材に関してはもう少し乾燥しているほうがよいでしょう。現在の日本の住宅室内は気密性が高くなり、昔より乾燥していると言われています。気乾含水率は約10%とされています。気乾含水率とは、ずっとその中に入れておいた木材が安定する含水率を指します。気乾含水率10%の部屋に入れた木材の含水率は10%まで下がったり、上がったりして安定するということです。

なので室内で使用する木材に関しては、含水率が10%になることを想定していないといけません。木材は水分をはき出すことで縮みます。縮んだ時に割れたり、反ったりします。その板が一度も経験したことのない含水率まで下がる事は、割れたり反ったりする可能性を高める事になるでしょう。一度その含水率まで下がっていれば、もう一度その域まで含水率が下がっても一度経験した大きさになるだけですから、割れたり反ったりするリスクは低くなると考えています。また、木材には一度含水率が下がると、元の含水率に戻りにくくなるという性質を持っています。そういった意味でも含水率を下げることは重要な意味を持ちます。

それでも、細かく反ったりすることがあるので無垢材は取り扱いにくい材料とされています。ただ、家具には適した材料だと思っています。鉄は強度はありますが、大がかりなものになるととても重くなります。また、空気が冷えると鉄も冷えます。冬の寒い朝などは鉄には触れたくないですよね。そういった意味だと、木材は温かみがあります。空気が冷えても、木材自体はそれほど冷えないですからね。

ソリウッドで扱っている木材は乾燥済の状態で仕入れるものと未乾燥の状態で仕入れるものがあります。基本的にストレートカットテーブル、ベンチ、棚やテレビボードに使用する木材は人工乾燥済みの木材を仕入れています。ウォールナット材やチェリー材など北米産の木材は現地で製材されて、人工乾燥済みの状態で日本に入ってくるものがほとんどです。国産材やロシアから入ってくる木材は、日本の製材所で製材されて日本で人工乾燥庫に入れられています。

一方で耳つきテーブルに使用している板の多くは未乾燥の状態で仕入れてソリウッドの木材乾燥庫に入れて乾燥させています。ソリウッドのような小さい工房で自前の木材乾燥庫を持っている所は少ないでしょう。材木市場で板を購入しても乾燥させるのに時間が掛かったり、他社の乾燥庫で乾燥させるコストが掛かってしまいます。また、乾燥状態の微妙なコントロールをすることができません。

自前の乾燥庫があると、好きな時に乾燥庫に入れる事ができます。一度人工乾燥庫に入れた板もしばらく置いておくと含水率が少し上がります。そうした板も乾燥庫をもっていれば、乾燥させて含水率を下げてから使用することができます。こうして製作後の狂いを最小限にとどめる事ができると考えています。

新設の木材乾燥庫に入れた材の含水率を1日の始めに計測しています。その様子はソリウッド・プロダクツのInstagramアカウントでレポートしています。ここではその内容をまとめてみます。

試験材Aはウォールナット材の板です。W1000mm・D400mm・T40mmほどの小さめな板です。こちらは製材してから2年ほど経っている状態で仕入れた材です。人工乾燥庫に入れた経歴はなくずっと天然乾燥させられていた板です。木材乾燥庫に入れる直前に計測した含水率は17%でした。含水率の計測地点は板の中央部です。木材乾燥庫に入れて1週間経って同じ部分を計測したら含水率は10.2%になっていました。1週間でここまで含水率が下がったことはこの乾燥庫の実力はそこそこあると確信しました。ただ、その後含水率が停滞気味です。含水率8%まで下げる予定にしていますが、あとどのぐらいで達成できるでしょうか?楽しみにしています。

試験材Cはクリの板です。W1900mm・D350mm・T50mmの板です。2015年の10月に仕入れたばかりの板です。おそらく仕入れた直前に製材されたはずです。乾燥庫に入れる直前の含水率は44%。まだ多くの水分を含んでいます。いわゆる”ずぶ濡れ”状態の板です。生材とも言いますね。こちらの板は、1週間で24.8%まで下がりました。

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ずぶ濡れの板は自由水を多く含んでいます。自由水は細胞外に存在している水で製材直後からどんどんと抜けていく水分です。含水率30%までは自由水が抜けていると一般的には言われています。なので、この段階は簡単に抜ける自由水が放出されていると考えます。ここから先は結合水という細胞内部に存在する水分を放出させる必要があります。結合水は化学的に結びついている水分なので、自由水よりも放出されにくいです。これから先どういう風に含水率が低下していくかが見所です。こちらのレポートはいずれまたブログで書くと思います。

こうして、乾燥庫内の木材の含水率の経過を観測していくのは面白いです。いつも計測する前にどのぐらいになっているかなと推測してから水分計を当てています。思った以上に下がっていない場合はがっかりします。そして、もっと効率良く下げる工夫は出来ないか?なぜそんなに含水率が下がらなかったのかを考えています。(考えても結論はでませんが…) 逆に思った以上に乾いていると”おお! 良い調子、もっと頑張って放出してくれ”と喜びます。そしてデータをとることで乾燥庫の能力を知る事ができます。そのデータを活かしてもっと効率よく乾燥させる方法が見つかれば嬉しいです。

瑞木@相模湖

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