2015.04.20

ラップでクルクル、割れなきゃラッキー。

木というのはなかなか不思議なもので、研究はされてはいるものの未だに良く分かっていないことも多いのです。個体差というのも大きくて、それぞれにたいして個別に対応しなくてはいけない部分も多くあります。

木材は乾燥をさせないと使用することはできません。特に我々が製作しているテーブルなどの家具は乾燥が非常に重要になってきます。木造住宅に使用するスギやヒノキの構造材は含水率20%以下になっていると乾燥していると考えるようです。しかし、家具に使用する場合はその程度の乾燥では不十分です。

木材は周りの空気の水分量と均衡するように、水分を吸収したり放出したりします。日本の気乾含水率は約15%とされています。つまり、ずっと木材を置いておくと木材の含水率が約15%になるということです。もちろん日本と一括りにいっても北海道から沖縄まで南北に長く存在しているので、気候はだいぶ違います。あくまで平均して約15%ぐらいになるということなんですね。

木材乾燥には天然乾燥という乾燥方法があります。風通しの良い場所に木材を桟積みしておいておく乾燥方法です。製材したばかりの板は水分をたくさん含んでいます。手で触ると湿っているのが分かるぐらいに水分を含んでいます。乾燥していない板を持つとズシリと重い感触が手に伝わってきます。それらの板を両面が空気に触れる形でおいておくと徐々に水分が抜けていきます。最終的には気乾含水率に近づいていきます。ただし、時間はかなり掛かります。私達が扱う耳つきテーブル天板用の板は60mmの厚みに製材されている事が多いです。厚さ60mmの板が気乾含水率まで含水率が下がるまで2年ぐらい掛かると思います。

さらに外の気乾含水率は約15%ですが、住宅内はもう少し乾燥しています。現代は気密性の高い住宅は増えています。そんな訳で現代の室内の気乾含水率は約10%と言われています。つまり、天然乾燥方法だけで乾燥させた木材では乾燥不十分と言えます。含水率15%程度の板を住宅の室内に置いておくとさらに乾燥が進んで木材が縮む可能性があります。そのため、なるべく室内の気乾含水率である10%に近づけておいた方がよいのです。

木材の含水率を10%以下にするためには、人工乾燥をする必要があります。人工乾燥とは乾燥庫に入れて乾燥させる方法です。人工乾燥庫にもいろいろと種類があります。基本的には温度を上げて木材の乾燥を促します。温度が高い方が乾燥時間は早くなります。ソリウッドでは人工乾燥庫をもっていて、そこで乾燥をさせている木材もあります。耳つきテーブル用の板の多くは自前の乾燥庫で乾燥させています。

木材乾燥は失敗がつきものです。どんなに高価な板でも乾燥中に大きく割れたり、反ったり捻れたりしてしまう事があります。乾燥を行っている材木屋さんで乾燥で失敗(大赤字)したことがない人はいないと思います。材木市場などでも、乾燥で痛い目にあったという話は頻繁に聞きます。

もちろん私も失敗を結構しています。気に入っていた板がパックリ割れたり、高価な板が捻れが多く出てしまったりといろいろな失敗しています。それでも経験を重ねるとなんとなくこうしたら良いというのが分かってきます。

木口から割れるのは乾燥初期です。水分は表面から抜けていきます。特に木口は水分が抜けやすくなっています。木口付近だけ乾燥が進み、乾燥が進んだ部分のみ縮みます。もっと内部は水分が抜けていないので体積は変わりません。そこで無理な力が掛かって割れてしまう原因になります。

木口割れを防ぐには木口の乾燥を遅らせる事が必要です。そのため木口に割れ防止剤を塗る事があります。でもそれだけでは不十分な場合もあります。

下の写真の板は未乾燥のチェリー材です。長さが1900ミリしかありません。木口から大きな割れが入ると長いテーブルが製作できなくなるので、割れさせたくありません。そこでラップの登場です。ラップでくるんで木口の急速な乾燥を防ごうという狙いです。

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過去にもこうした試みをしたことがあります。正直言うと、上手くいったり、いかなかったりで効果があるのか判断しかねています。でも少しは効果があるように感じるので、あまり割れて欲しくない板には時々こうした処置をして乾燥庫にいれています。

瑞木@相模湖

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