2014.07.21

同じサクラ材でも日米のサクラで乾燥性格が全然違う!

一昨日のブログエントリーは木材の乾燥と樹種による乾燥性格の違いという超マイナーな内容だったので、あまり読まれないだろうと思っていました。が、意外と興味をもった方がいるようでいろいろな数字を見てみると、まあまあウケていたようです。

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そこで、調子に乗って続きを書く事にしました。一昨日のブログエントリーを読んでいない方はまずこちらを読んでみてください。→木材乾燥の基本と樹種による乾燥性格の違いについて

木材は樹種によって性質の違いがあります。重さ、堅さ、匂い、粘り、加工のしやすさなど、木によって全然違います。木材を乾燥する段階でも、樹種によって様々な違いがあります。先日のエントリーではトチ、ナラ、ウォールナットの乾燥性格について書きました。今日のエントリーはこの続きで、これまでに乾燥させた樹種の乾燥性格を述べることにします。

まずは、日米のサクラについて。日本のサクラで家具に使われるのはヤマザクラです。お花見で観賞するソメイヨシノは木材として流通されることはほとんどありません。ソメイヨシノの観賞用に作られた種類で、大きく成長すると中が空洞になりやすいので板材として使用するのには向いていません。ヤマザクラはソメイヨシノの花と比べると白っぽい花をつけます。木材としては、かなり人気の樹種ですが、良材の流通量は多くありません。少し緑がかった濃いオレンジ色をしているヤマザクラ材は、年が経つにつれてどんどんと色が濃くなって良い味になるのが人気の秘訣。でも、ヤマザクラ材の乾燥性格は良くありません。

ヤマザクラ材は水分が抜けてくると、大きく捻れます。捻れ具合は板によって差はありますが、酷いのはほんとに酷く捻れます。桟積みしているのが崩れてしまうのではないかと思うぐらい捻れます。特に成長が早くて目が粗いヤマザクラ材は捻れが酷くでる傾向にあります。捻れ始める時期も早いです。製材してそんなに時間が経っていないヤマザクラ材が見る見るうちに捻れていった経験があります。ヤマザクラ材を製材する時は、予定の仕上がり寸法よりもかなり余裕をもって製材することをお薦めします。

一方、アメリカのサクラ:チェリー材の乾燥性格はかなり良いです。ヤマザクラ材のような捻れがでることがありません。乾燥の速度も速い部類に入るでしょう。辺材と心材の乾燥スピードの差もあまりありません。木口から大きな割れが入る事もありますが、他の材種と比べて特に多いというわけでもないです。注意するのは耳の部分から割れが入りやすいという点です。これに関しては、7月7日のブログエントリーで触れています。

カバ材は水分が抜けやすい性質を持っています。天然乾燥で野外に桟積みしているだけで、どんどん含水率が落ちていきます。捻れが大きく出る事も少なく、乾燥性格は良好です。カバ材は日本では桜材と呼ばれることがあります。が、ヤマザクラ材と比べると乾燥性格はだいぶ違います。(カバとサクラが似ているってだれが言い始めたことなんですかね?僕からすると全然違うのに……) カバ材は乾燥性格が良いので、乾燥工程でそれほど慎重にならなくても良いです。乾燥時間が短くて済むので、早いサイクルで回せるのがカバ材の良いところにもなります。

次はカエデ材です。カエデ材は人工乾燥庫に入れると大きく変化します。板の中心線を頂点にしてへの字に反る性質があります。さらに捻れも大きくでます。よって、幅広く使うことは難しいです。幅500〜600ミリぐらいのカエデ材でも反りや捻れが大きくでると、真ん中で割って使わざるを得なくなります。天然乾燥期間をなるべく長くして含水率を低下させてから人工乾燥庫に入れたりと工夫をしましたが、結果に大きな違いがありませんでした。天然乾燥時はそれほど大きく反ったり捻れたりしないので、人工乾燥との相性が良くないのかなと思ったりもしています。いろいろと試行錯誤して、カエデ材にピッタリの乾燥方法を探し当てたいと思っていますが…それにはまだたくさんの経験が必要になりそうです。

なので、カエデ材を仕入れる時は幅広い材でも割って使用することを念頭に置いて仕入れています。そうしないと大損してしまいますから。ちゃんと乾燥すれば問題なく使える材料ですから、乾燥性格がもう少し良ければもっと評価が高くなるはずなんですけどね。

とこんな感じ、樹種による乾燥性格の違いをまとめてみました。もっといろんな材種をガンガン乾燥させて違いをたくさん知りたいなと思っています。が、どうしても人気樹種の仕入れを優先してしまうので、なかなか材種を拡げられないのがちょっと残念。

瑞木@相模湖

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