2013.08.31

ただの木片も売れるモノである

2010年の春ごろからソリウッドでは”癒やしの木片”という商品の販売を始めました。”癒やしの木片”とはなんのことだろうか。単純に言ってしまえば、ただの木片である。200×50×50(mm)ぐらいの大きさの木の塊。

お客様に”何に使うのか”と問われると、いささか回答に困ってしまう。好きなように使ってくださいとしか言いようがないただの木の塊だから。

そうは言ってもさすがにそれではマズイので、自分達でもどう使うかを考えてみました。

1.
ブックスタンドとして使う。

2.
オブジェとして置いておく。

その他にいくつか案は上がったが、所詮は何かを置いておく台だったり、立てかけておくための支えとしての使用方法なので、1.のブックスタンドと大差はない…

こうなったら、開き直るのがベストである。「使用方法はお客様の想像力にお任せします」と。

ということで、世界一使用用途が不明な商品が誕生したのである。強いて言えば、あなたの身近な場所に置いてみてください。これが”癒やしの木片”の用途である。

では、お金を払ってまでして身近に置いてもらえるためには何が必要なのか?

ソリウッドの答えは、木であること、本物の木であること。そして耳つきであること。

あとは木の魅力を引き出すために、適度に磨き仕上げてあげればいい。

木に限らず天然素材は、人間の手を加えることで輝きを増すものが多いです。例えば、革。牛や豚から引き裂かれた皮を鞣して、初めて私たちが使える素材になります。皮から革になるまでには、膨大な手間と時間が掛かっています。

木材も樹から木に変えるためには、手間と時間が掛かります。(樹から木へ。皮から革ほど、漢字の使い分けがされている訳ではないですが、イメージはなんとなく分かって貰えますよね。)

一番手間と時間が掛かるのが乾燥です。内部にたまっている水分を出して、安定して使用できるようになるまでは1年から3年ぐらい掛かります。(乾燥の話はいずれこのブログに書きます。)

乾燥中に板の表面は汚れやシミで汚くなってしまいます。そこで表面を削って綺麗に仕上げる必要がでてきます。

実際に”癒やしの木片”はどうやって作っていくのかを見ていきましょう。

1.工房内から木片になりそうな端材を見つけてくる。耳つき無垢材テーブルを製作する際に切り落とした使わなかった方の端材を使うことが多いです。その他、掘り出し物がないか辺りを物色します。

2.
耳つきの材の場合は耳掃除をします。ワイヤーブラシで汚れや薄皮を取り除いていきます。

3.どの部分をどのぐらいの長さに切るかを検討します。耳の状態や木目の面白さを見極め、置いておきたいと思わせるような木片に仕上がるように長さ決めをします。

4.
ベルトサンダーやオービタルサンダーで耳以外の部分を研磨していく。

5.木片の角で手を切ったりしないように小さく面取りをする。

6.サンドペーパーで細かい傷を消すように研磨する。

7.自然塗料であるリボスオイルを塗る。

ざっと以上のような手順を踏んで”癒やしの木片”に仕上げていきます。

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現代製造業においては、作る側が使用する目的をきっちりと決めてしまう場合が多いですよね。目的以外のことに使われてなにか事故がおきたりすることを製作側が過度に怯えています。あるいは、他社の製品と区別するために自社仕様で雁字搦めに縛って拡張性を奪い、用途を拡げにくくしたりしていますよね。ある意味仕方ないですが、そういった事は使用者の自由な発想を妨げる要因にもなりますよね。使用者が受け身の姿勢で終始してしまいます。私は生産者と使用者の関係はもっと曖昧の方がおもしろいのではと考えてしまいますが…

さて”癒やしの木片”ですが、実際に店頭に並べてみると、こちらが予想もしていなかった使い方をしたいという人が現れました。絵本作家の山田和明さんです。自然のカタチをそのまま活かして山田さんの絵の中に取り込まれた木片は舟になったりしました。そして、その作品がイタリア・ボローニャ国際絵本原画展に入選するというとても喜ばしい結果も生み出しました。

こういう出会いを生んだのも我々がただの木片として商品化したからだったと思います。これをなにか加工してちゃんとしたブックスタンドや穴をあけてフラワーベースにしたりしてたら、この出会いはなかったのではないでしょうか。

ソリウッドは、『木とあなたをつなぐ心地よい居場所』を提供することを企業理念として掲げています。この”癒やしの木片”も気軽な気持ちと手頃な価格で本物の木をあなたの生活に取り入れ、心地よい居場所を作り出してもらいたいという我々の思いで製作しています。

今までに150個ほどの木片が売れました。すでに吉祥寺ショールームに置いてあった木片はほぼ売れてしまいました。吉祥寺で
デートを楽しむ若いカップルからゆったりと人生を楽しみたいとおっしゃる年配の方々まで、幅広い層のお客様に購入していただきました。これかも、吉祥寺で木を売ること続けていきます。夏休みも終わり、受注家具の生産も一息したところで、新たな木片の製作を開始しました。トチ、チェリーなど数十個の耳つき木片がまもなく完成します。

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瑞木@相模湖

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