2015.06.22

雨に濡れたウォールナット材からヒントを得ました。-木材乾燥考-

梅雨時は洗濯物が乾きにくくて、嫌ですよね。いつ雨が降るかも分からなくてなかなか外に洗濯物を干す事が出来ません。ジメジメと湿度が高い日は洗濯物に限らず、スッキリとしない気分になります。木材の乾燥でも同じで、梅雨時は板の乾きが鈍くなります。だから、この時期は木材乾燥をする者にとっても、厄介な季節なんですね。

今日は雨が降らなそうだったので、外でやる仕事をメインにしました。乾燥庫に入れた板の乾燥具合をチェックしたり、樹皮を落としたりと、外仕事で汗をかきました。そんな中、ちょっとした発見をしました。

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外で天然乾燥をさせておいたウォールナット材です。製材したばかりの板は水分をたくさん含んでいます。そのまま置いて奥と、水分は段々と抜けていきます。木材内の水分は、周りの空気と平衡するようになります。日本の屋外の気乾含水率は、約15%と言われています。つまり、そのまま置いて奥と板の含水率は約15%になるというわけです。自然の営みなので、必ずしもそうなるとは言えませんが、理論上はそういう風になります。水分が抜けていくと、当然体積も縮みます。製材した直後と乾燥後を比べると、5cmぐらいは違うと思います。なので、乾燥していない板を使って家具を製作すると後々問題が起きてしまいます。隙間があいたり、崩壊したり、パックリ割れてしまったりと。もちろん、乾燥をしっかりさせたからと言ってこうした問題が全く起きないとは言い切れません。製品になった後も、木材は水分を吸収したり、放出したりします。そうした影響で問題が起きてしまう可能性もある訳です。ただ、乾燥が不十分な板と乾燥がしっかり出来ている板では、受ける影響がまったく違います。だから、木材の乾燥はとっても重要なんです。

さて、上の写真ですが今日計測した含水率を表記しています。黒いチョークで書かれているので見えづらいですが…
幅方向で3箇所計測しています。右から45%、38%、23%となっています。この板は去年仕入れた板なので、感覚的に30%は切っていると考えていました。でも、右側と中心は30%以上になっています。特に右側の45%は高く感じます。

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同じ板の中心付近の含水率です。ここの含水率はイメージ通りになっています。通常パターンですね。両端の含水率が低くて、真ん中の含水率が少し高めになっています。本来は木口に近い方が含水率が低くなります。でもこの板は、木口付近の含水率の方が高くなっています。考えられる原因は、木口は雨に濡れやすいということです。板は横にして桟積みをしています。なので、板の中心付近は雨に濡れにくいんです。逆に木口は、雨が横から降ってくれば濡れてしまいます。この板は、木口付近が雨に濡れたために含水率が高くなっていたと推測できます。

実はこの状況は、木材乾燥にとっては好条件です。通常、板の水分は木口から早くたくさん抜けていきます。そして、木口付近が先に乾燥していきます。木口付近とそうでない部分の乾燥進度のの差が割れの原因になります。だから、割れを防ぐ為には木口の乾燥をなるべく遅らせる必要があります。木口付近の方が含水率が高い状態で木材乾燥庫に入れてしまえば、木口とそれ以外の含水率の差を少なくすることが出来ます。

今まで木口の乾燥を遅らせる事を考えていたので、木口付近だけ水分をたくさん含ませておくという方法を思いつきませんでした。梅雨時で雨が続いた直後に板の含水率を計測したことで、この事に気づくことが出来ました。ラッキーです。

この板はそのまま木材乾燥庫に入れました。もし木口から割れが入らなかったら、今後は木口付近を濡らしてから木材乾燥庫に入れるようにします。

木材乾燥はいろいろと試行錯誤をしながら、ベストな方法を探っています。いろいろと実験をしてきましたが抜群の効果が出た方法はまだありません。さて、この発見は良い効果を生み出すでしょうか。ちょっと楽しみです。

瑞木@相模湖

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