2013.12.25

木に関する書評「多種共存の森 1000年続く森林業の恵み

「イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか?」「樹木学」など樹木に関する自然科学系の本を多く出版している築地書館から発売された「多種共存の森」を今日は紹介します。

多種共存の森

以前、瑞木@相模湖もこのブログで語っていますが、自然素材である木に毎日接し、その恩恵で商売をしている身としては、やはり森が気になります。特に最近では日本の林業の衰退が指摘され、古くから共存してきた森や木が日本人にとって、距離のある存在になってきているような感じがします。

森の中を歩くと落ち着く、やっぱり木のテーブルの触り心地が良いと感じたことは誰でも経験があると思います。少し大げさかもしれませんが、そのような経験がずーっと出来るように森を守る必要があります。そういう意味でも持続可能な森林を維持し、木と供に暮らすことは専門家ならずとも、頭の片隅に置いておくべきことだと考えます。

そのために必要な知識を得るきっかけになると感じる本が清和研二著の「多種共存の森 1000年続く森と林業の恵み」です。著者は樹木の種子の発芽・成長の仕組みを研究しながら、今後の林業のあり方を自然のメカニズムにヒントを得ながら広葉樹・針葉樹の混合林の林業・森作りを提案する。

前半はなぜ人の手が入らない森は、様々な種類の樹木が共存するのかを実験結果をもとにわかりやすく解説する。内容的には自然科学の専門的なものになるが、具体的な例示とともに非常に読みやすい。特に、温帯雨林にみられる種の多様性の要員のひとつとされる森の秘密はなるほどと思う内容だ。

樹木は親の近くでは育たない

なぜ森には多くの種の樹木が共存するのか?そのジャンゼンーコンネル仮説と呼ばれるメカニズムが根底にあるとされる。樹木は通常、種を落とす、もしくは鳥や動物を介して種を運び子孫を残そうとする。しかし、樹木の子供といえる実生(芽生え)が生き残る確率は、親の木の下では最低で、親から離れるに従い高くなるという。このような事象が続くと、親の木の近くに同じ樹種の子は育たなく、その開いたスペースには他の樹種の実生が成長する。こうして、多種多様な森が出来上がる。

このことは、私たちの近くの森でも起っているヤマザクラという山に自然と生息する桜の木は、森の中でまとまって見られることはなく、ボツンボツンと離れて花を咲かせている。山の遠くから見ると、薄いピンク色の花が点々と離れているのがわかる。これも先ほど書いたジャンゼンーコンネル仮説で説明が出来る。

本著の後半では、自然のメカニズムをもとにした混合林の作り方を提案している。このあたりまでくるとさらに専門的な内容になってきて、林業に従事したことがない人はついていくのが難しい印象はありますが、著者の主張は明確です。

賢木@吉祥寺

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