2013.09.02

みんな大好き”台直し鉋”

唐突ですが、台直し鉋って聞いた事ありますか?

多くの方は、「うーん、聞いた事ないなあ… 普通の鉋とは違うんですよね?」ってな感じだと思います。はい、とってもマイナーな存在ではありますが、鉋使いにとってはなくてはならない超重要アイテムなんです。しかも、道具を調整するための道具という、もう決して陽の当たらないところでしか活躍しない(活躍できない)不器用な奴でもあるんです。

それでも、道具好きの間ではそれなりに人気もあるんですよ。木工教室の生徒さんにも台直し鉋が好きな生徒さんがいます。私も結構好きですね、台直し鉋。今日はそんな台直し鉋に焦点を当ててみます。

台直し鉋。読んで字のごとく”台を直すための鉋”です。しかし、知らない人にとっては???でしょう。

何の台を直すの?

ずばり、鉋台です。鉋がどんなカタチをしているかを知っている人は多いと思います。30cmぐらいの直方体に斜めに刃が刺さっている奴です。その鉋の木の部分を鉋台と言います。

鉋台によく使われる木材は樫(カシ)です。樫には白樫と赤樫があります。もともと赤樫は量が少なく貴重でしたが、現在はほとんど供給されることがなくなったようです。そのため、現在販売されている鉋台の多くは白樫で出来ています。他の材の鉋もごくたまに見かけますが、キワモノ的な扱いの物がほとんどです。

樫は日本産材の中ではもっとも硬い材の一つです。その強靱さを買われ大工道具の柄などに多く使われています。玄翁(かなづち)の柄や鑿の柄にも多く使用されています。しかし、硬くて強靱な樫を使っていても、鉋の台はすり減っていきます。そして、木ですので当然狂いが生じます。

すり減りと木の狂いによって、カタチが変わると鉋の刃がうまく材に当たらなくなってしまいます。そこで台直し鉋の登場です。台直し鉋で、鉋台の変化を削って元の通りに戻してあげます。

つまり、台直し鉋はすり減ったり、狂ってしまった鉋台を直すために使う鉋なのです。

木工教室でこの説明をすると必ず聞かれる質問があります。

「台直し鉋の台はどうやって直すのですか?」

他の台直し鉋で直します。ではその他の台直し鉋の台はどうやって…

無限ループに陥ります。

実際は台直し鉋の台直しはそれほど頻繁にやらないし、精度良くやる必要もないので鑿を立てて削ったりしています。

これが台直し鉋です。

130902_3.jpg

台直し鉋の特徴は、刃の刺さっている角度にあります。ほぼ垂直になっています。刃が垂直なため、普通の鉋のような帯状の屑はでません。細かい粉の屑がでるだけです。普通の鉋は刃が寝ているため硬い木を削るのには適さないと言われています。木工の本などには、台直し鉋は硬木を削るためにも使うと書かれていますが、実際にそのような使い方をしている人は見た事ないです。確かに普通の鉋で超硬いブビンガ材を削ると上手く削る事ができません。そもそも鉋はこんな硬い木を削ることを想定されていませんからね。だからといってその替わりに台直し鉋を使うなんてことはしないです。いるんですかね?ちょっと疑問です。

130902_2.jpg

台直し鉋で鉋台を直しているところです。鉋台に対して横または斜めに台直し鉋を当てて引きます。

実際の台直しの作業は慣れが必要な高度な作業です。はじめのうちはどこをどのぐらい削ればいいか分からないです。ただ、慣れてくるとこの辺りが高くなってるからここを削ればいいというのが分かってきます。そういう技の要素があるのも台直し鉋が愛される要因の一つかもしれないです。

とまあ、今日は台直し鉋に焦点を当ててみました。

瑞木@相模湖

130902_1.jpg

お問い合わせContact

TEL:0422-21-8487
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-3 2F
(営業時間: 12:30〜18:00/定休日:火・水曜日)
お問い合わせフォーム
Facebook Twitter Instagram Pinterest